音楽隊の行進だ
三人めは中学高校の同級生。
知りあってから現在までまったく雰囲気が変わっていない奇跡の人。
彼女のはじまりも小学生のときだった。
区の合奏コンクールの練習が大詰めに入った週末、先生は彼女ともう一人の女子に楽器を持ち帰るようにといった。
お休みのあいだに、家でも練習してきなさい、と。
楽器とはアコーディオン。
彼女と相棒は大喜びで、後ろにランドセル、前にアコーディオンを装着して下校した。
二人の家は近かった。
最初のうちはおとなしく歩いていたが、どちらからともなく、アコーディオンの留め金をはずした。
彼女が前で相棒は後ろになり、弾きながら歩きはじめる。
住宅地の低い生け垣の道。
二人はもうぷがぷがどんどんの勢いになっていた。
わたしたちね、ふだんは優等生のほうだったの。
いたずらはしたことないし、大声出してふざけるなんてこともなかった。
それがそのときは愉快でうれしくて、わはははわははは笑いっぱなし。
アコーディオンも大音量で、よく周りのおうちから叱られなかったと思う。
生まれてきてよかったあ、生きててよかったあ、と心から叫びたい気持ちだった。
あれがわたしのはじまりね。
中学以降の彼女も優等生には違いなかったが、笑顔はいつも大きかった。
アコーディオンではじけた彼女の生命が笑っている。