羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

映画の時間

わたしが映画をたくさん見始めたのは、母親になってからだ。

最初はビデオだった。

乳飲み子がいると遠出はできないし、もちろん一人で出かけることもかなわない。

臨月まで落語や演劇に通いつめていたほどの鑑賞欲求を満たしてくれるものは、洋画のビデオしかなかった。

家から少し離れたところのレンタルビデオ店が、一回100円で出前をしてくれるのを最大限に利用して、毎日返しては借り、返しては借りして、相当の数のビデオを見た。

 

見方は俳優中心で、この人いいなと思ったらありったけの作品を見る。

ロビン・ウィリアムズアル・パチーノロバート・デ・ニーロ、ロバート・ダウニーJr、マイケル・キートンビリー・クリスタルガブリエル・バーンコリン・ファース...

並べてみると、手当たり次第の感がある。

なんといっても、遅くなってからの映画ファンだから、筋道というものがない。

とはいえ、いちばん好きになってもうそこから動かないのは、ステラン・スカルスガルド

グッドウィル・ハンティング」の数学者の人、といってわかってもらえるだろうか。

 

娘が幼稚園に入って、ようやく映画館にいけるようになった。

最初に観たのが「奇蹟の輝き」で、次が「マトリックス」だった。

忘れもしない。

そのころにはもうDVDプレイヤーを持っていたから、好きな作品のソフトを集めるようにもなっていた。

 

いま現在は、あのころほど映画に打ち込んではいない。

DVDを次々借りるということもない。

ただ、一度辞めたWOWOWにまた入って、暇なときに番組表も見ずにぱっとつけて、たまたま見たかったものや、もう何回も見た好きな作品に当たったりするのが楽しい。

 

映画館へは一人でいくのが基本になっているので、いつでも思い立ったらいける。

幼稚園のお迎え時間を気にして、中央線が止まったらタクシーで帰ってきたりしたことが夢のようだ。

 

監督で観ることはないし、映像美に集中することもあまりない。

ミーハーなファンのままだが、俳優の演技の迫力を感じることをいつも愉しんでいる。