羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

言葉を選ぶ

文章を書くということは、すべて、言葉を選ぶことだと思っている。

文法にのっとって、意味が通じるように正しく書くことは前提ではあるが、極端にいえば、名詞の羅列でも伝えたいことは表せる。

よこはま、たそがれ、ホテルの小部屋、だ。

 

いま伝えたいことにもっともふさわしい言葉を選ぶ。

わたしは文章を書くのが好きで、暇さえあれば文章を頭の中でもノートでも携帯でも綴っているが、それは、言葉を選ぶことが好きでたまらなくて、それをしないではいられないからだ。

 

そして、言葉選びは、純粋に即興であり、いまだからこの言葉を選んでいる。

同じテーマで明日書こうと思ったら、まったく違う言葉を選んでいることだろう。

 

そして、いま、この気持ちを表すのにもっともふさわしい言葉は、一つしかない。

これでもいいし、あれでもいい、ということはない。

そうわたしは思っている。

これしかない、というものを選ぶことが「選ぶ」ということだと。

 

格好つけていうならば、言葉を選んで文章を書くのは、星が光るのと同じだ。

いま光って、いつか誰かの瞳に届く。

これしかないと思う言葉で光る、いまというときが、相手の中で光るのだ。