変わらないわねえ。
わたしの出身大学では、年に一度卒業生のホームカミングのイベントが催される。
ゴールデンウイーク中の一日で、体育館ではバザー、学生会館の周りには模擬店、ホッケーグラウンドではこども向けのゲームが開かれている。
同じ沿線に住んでいたこともあって、こどもたちが小さいころには毎年訪れていた。
ある年、最寄り駅に着いて、娘を抱いて改札を出ると、目の前で、待ち合わせていたらしい先輩同士が喜びの声を上げていた。
「まあ、変わらないわねえ」
「あなたこそ、ぜんぜん変わってないじゃない」
わたしは二人の傍らを、もちろん聞こえないようにつぶやきながら通った。
「変わってるよ」
あの先輩方、いまのわたしたちより年下だったかも知れない。
失礼なことをした。
が、しかし、あのときわたしは学んだ。
「変わらない」と思うのは、かつての同学年同士に限るのだと。
中学高校のともだちとかなり頻繁に会うが、わたしたちもいつも「変わらない」といいあう。
それはたぶん、関係性が変わっていないということだ。
お互いが会ってそこに生まれるムードが、10代のときと少しも変わっていない。
わたしたちにはもう一つ、強烈なスクールカラーというものがある。
わたしが友人二人と食事したときの写真を息子に見せたら、おんなじだ、と笑った。
彼の幼稚園のともだちがわたしたちの後輩になっていて、やはり三人で撮った写真を見せてくれたのだという。
二枚の写真は雰囲気がそっくり。
世代の違いを軽く超える集団の個性。
それはもはや十字架といってもいいのかも知れない。
おそらく、このままどこまでもいくのだろう。