羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

ふられ男ベスト3

以前ある女性誌で、ビデオレンタルのガイドとして「このテーマで3本」という連載をしていたことがあった。

たとえば「男の友情3本」とか「号泣3本」とか。

 

いま書くと同じテーマでも作品が変わるかも知れなくて、そのとき挙げた作品も定かでないものもあるが、このテーマだといまも同じ。

「ふられ男ベスト3」。

 

「めぐり逢えたら」のビル・プルマン

「あなたが寝てる間に」のピーター・ギャラガー

「ユー・ガット・メール」のグレッグ・キニア

この3人が、栄えある表彰台メンバーだ。

 

グレッグ・キニアは、メグ・ライアンにふられたときすでに別の女性が気になっていたから純正のふられ男ではなかったが、彼女の部屋を出るときの、タイプライターを抱えた姿はさまになっていた。

(彼はもの書きだった)

 

ピーター・ギャラガーは、タイトル通り、ほぼ全編意識不明のまま。

あのディズニーのアニメーションの王子様のような濃い顔がただただ眠っているのは、けっこうかわいい。

目が覚めたら、自分を助けてくれたサンドラ・ブロック(彼女は最初ピーターに憧れていた)が、弟といい感じになってしまっている。

 

そしてこの弟役がビル・プルマン

「めぐり逢えたら」ではメグ・ライアンからバレンタインデーに婚約指輪を返されてしまう。

堅物で面白みのない男ではあったのだけれど、このときの彼の態度が立派。

誇りをもって潔く身を引く。

婚約中なのに、ラジオで聴いた声が素敵だったってだけでトム・ハンクスを探しまわったメグ・ライアンのほうがとんでもない女に見える。

実際、とんでもない女ですね。

ビル・プルマンのこれからの幸せを祈らずにはいられない。

 

わたしとしては、彼がベストオブベスト。

スピンオフを作りたいくらい。

 

ふられ男がいいと、メインのカップルが引き立つ。

大事な役割だ。

彼女にとってはいまは物足りなくなった男かも知れないけど、ダメ男ではない。

キャラクターを一面的に描いてないこと、つまりタテヨコ高さのある人間として見せていることが、ラブコメディを大人っぽく、深みのあるものにする。