羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

思ってない

娘が中学生のときだったと思う。

話の流れで聞かれたことがある。

 

「ママは小さい子や赤ちゃんが好きだから、わたしに早く孫を生んで欲しいと思ってるでしょ」

 

あわてて答えた。

 

「ぜんぜん、そんなこと思ってないわよ」

 

わたしが街で赤ちゃんや小さい子にすぐ注目するのはこどもたちもよく知っている。

息子はこども好きだから、いっしょになってこんなかわいい子がいたとか見たとかという話をするが、娘は年下の子は苦手といって距離を置いて見ているようだった。

 

その娘が、わたしがそんな期待をしていると思っていたとは。

こどもというのは、親の言動を自分に引きつけて解釈するものなのだと改めて知った。

 

わたしが赤ちゃんが好きなのと、あなたが赤ちゃんを生むのはまったく別のことよ、と説明した。

どうでもいい、関係ないというふうには伝わらないように注意して。

 

彼女は、安心したあ、と笑った。

わたしも気持ちが通じてほっとした。