羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

できるようになったことを

こどもは泣くことしかできない状態で生まれてくる。

そこから一つ一つ、ときにはいくつかのことをいっぺんに、学習して、できることを増やしていく。

それが成長だ。

 

ほとんどの(恵まれた)母親は、こどもの産声を聞く。

そして、こどものたった一つのできることを喜び、涙さえ流すのに、それから幾月も経たないあいだに、早くも、なにかができないことを嘆きはじめる。

 

できないことは無数にある。

自分も同じ。

できることは少しずつしか増えない。

少しずつしか増えない数と、無数とを比べたら、前者は完敗だ。

自分でさえがっかりするようなことを、こどもたちにはしたくない。

息子が幼稚園生のときに、そう思うようになった。

 

こどもにはこどもの、できるようになりたいことがある。

それを尊重し、見守るだけで十分ではないだろうか。

 

彼らができるようになったことを、一つ一つ、ともに喜ぶ。

育児はその積み重ねだ。

いつも喜びをもって、見守っていたいと思う。