なぞの小鳥
このアパートに移ってきて2年半近く経つ。
当初から、上の階のどこかに小鳥がいるような声がする。
きゅ、きゅきゅきゅきゅきゅ...
きゅ、きゅきゅきゅきゅきゅ...
のリズムで聞こえてくる。
でも、鳥だったらもっと始終鳴くのではないか。
一日部屋にいるときでも、聞こえるときは聞こえるけれど、聞こえてこない時間のほうがずっと長い。
それに、鳥だったら、鳴き声にパターンはあるとはいえ、毎回、同じリズムということはないのではないか。
ホーホケキョ、だって、ケキョ、があとからくっついてきたり、ホー、ホケキョウ、と語尾を強調してくるときもある。
小鳥の声ではない。
とすると、なに。
水道管のウォーター・ハンマーか。
上の階の水回りが立てている音なのだろうか。
きゅ、きゅきゅきゅきゅきゅ...
きゅ、きゅきゅきゅきゅきゅ...
でも、小鳥にしておいたほうが楽しい。
いままで見たことのない色の小鳥。
こんな文鳥いるんですか、っていうような。
最近では聞こえてくると、ああ、自分の部屋にいるんだなあ、と落ち着きと安らぎを感じる。
きゅ、きゅきゅきゅきゅきゅ...