羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

紹介します。

街で出会うこどもたちと、言葉や表情でコミュニケーションしていると、こどもたちの生まれもった礼儀正しさをしばしば感じる。


たとえば、ベビーカーに乗っている一歳未満の赤ちゃんは、目が合うと会釈してくれる。

赤ちゃんも会釈するのだ。

しないと思っていると見過ごしてしまうが、気づくとそれは優雅なものだ。

ロイヤルといってもいいくらい。


電車のなかなどで、ちょっと話した赤ちゃんは、そのあとは別のほうを見ていても、降り際に必ずまたこちらを見てくれる。

一期一会をわかっているのだと思う。


自分の大事な人をわたしに紹介してくれようとする子もいる。


マンションの同じフロアにMちゃんという女の子がいた。

いまはもう高校生だけれど、当時は2歳。

地方から遊びにきたおばあちゃんと買い物をしていたスーパーマーケットで、わたしたち親子といっしょになった。


Mちゃんはおばあちゃんの横にきちっと足を揃えて立ち、はにかんでいたが、誇らしげでもあった。


わたしが、この方がおばあちゃんなのね、というと、Mちゃんはえくぼを深くした。


少し前に、あるカフェで前の席から振り返ってにこおっと笑ってくれた男の子は、おかあさんの腕にそっと手を置いて、そこを見てという雰囲気を送ってきた。


おかあさんときたのね、といったら、もう、ぶんぶんするように元気を出して笑った。


こどもたちは大切な人を心から愛している。

わたしにまでそれを教えてくれるほどに。

とても光栄に思う。