羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

お値打ち

靴、ランジェリー、化粧品、アクセサリー。

わたしは、自分が入れ込んだものを人に薦めるのがうまい。


どれも、いってみればマニアックなもので、一般的な製品に比べたら値が張る。

この「値が張る」というのがわたしのキャッチフレーズ。

なにをするにも値が張っている。


お金持ちだからとか、お嬢様だったからということではまったくなくて、アパート暮らしの幼い頃からずっと張っている。

つまり「分不相応」が生涯のテーマなのだ。


それはともかく、自分が価値を認めたものを人に説明するのはとても楽しい。

靴にもランジェリーにも、人並み外れた能力を持つフィッターがいる。

そういう人に出会うと、もう他の靴やランジェリーは目に入らなくなるのだ。

彼らの人となりごと、それらのよさを伝えたい。


巷の、それも自前のバイヤーだ。

その熱心さに動かされて買う人が後を立たない、といったらおおげさだけど、マイブームをともだちブームに広める力はある。


自分が買わないお店でも、ともだちが好きでいくところならば、店員さんに力添えして購入を決断させることもできる。

もちろん、そのともだちに似合うこと、活用できるであろうこと、値段に見合った品質であることを判断した上でのことだけれど。


これがひとつの才能ならば、生かしどころはあるだろうか。

流しのハウスマヌカン

あるいは、お見立てコンサルタント


しかしこれは、お金にしようと思っていないから発揮されている「才能」なのだろう。


良いものには、持つ人に仕える真摯さがある。

そんな良いもの身につけると胸が開いて首がすっと立つ。

値は、ただ張っているわけではないのだ。