羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

I am here for you 1

映画の前に時間が空いて、書店に寄った。

少し前から読んでみようと思っていたティク・ナット・ハンの著書のコーナーがあった。


ハン師は、ベトナム生まれの禅僧であり、平和・人権運動家。

いま、ここに集中して、日常生活のなかで気づきつづけるための瞑想を説いている。


わたしが手に取ったのは『ブッダ「愛」の瞑想』(磯崎ひとみ訳・角川学芸出版)。

これだ、と感じてすぐにレジに持っていき、そのまま隣のカフェに移動して読みはじめた。


ブッダによれば、愛するとは、なによりも存在すること、というくだりに、心を包まれた。


ハン師もいう。

「愛する人にあげられる最も尊い贈りものは、あなたが真に『今ここ』に存在していることです」


自分の存在をしばしば手放してしまうのは、わたしの癖のようなもの 。

考えごとをすることで存在の不確かさを補うように過ごしてきた。


「愛する」ことも、頭で作りあげようとしていた。

相手のためになにかをして、それを相手に認めてもらいたい。

わたしが「愛している」ことを知って欲しい。

そんな焦りにも似た気持ちにとらわれがちだった。


愛は行為ではなく、存在すること。

そうだったんだ。

わたしはまちがっていた。


自分の存在があやふやだから、行動することで自分を人に認識してもらおうと思っていた。

愛においても。


この項続く。