羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

mindfulness

ティク・ナット・ハン師が説く「マインドフルネス」。

いま、ここ、に集中して、存在すること。

意識的な呼吸をし、意識的に歩くことで実践できるという。

 

わたしには幼時から、時間の外に出てしまうような感覚があった。

周りのすべてから遠ざかり、一人きりになっていく恐ろしさと静けさ。

 

「マインドフルネス」を知って思う。

あれはわたしが知らずに経験していた「いま、ここ」だったのではないかと。

 

時間の外はいつも同じ場所だった。

何歳のときにも、まったく同じ感覚を味わっていた。

ここでは時間は流れず、雪のように降りつもる。

そんなふうに詩的にとらえることもあった。

 

いまでも、慣れ親しんだそこへは、すっといける。

まるで隣の部屋のように。

世界のどこにいても、隣の部屋はいつもきっとそこにある。

 

ハン師ならそれを「浄土」と呼ぶのかも知れない。

一歩ごとにあなたは浄土に「着いて」いるのだから、どこへ急ぐ必要もない、という一文があった。

 

隣の部屋こそ自分の部屋で、そこではなんでもできる。

今夜は祈りを捧げよう。

愛する人たちの健やかな眠りのために。