羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

青春の演劇

舞台美術を学ぶ過程にある娘と、この2年ほど、ミュージカルや宝塚を観ている。

きょうは縁あって、娘にとっては初めての小劇場でのストレートプレイ鑑賞。

俳優さんたちの感情の波が、すぐそこから強く伝わってくる。

2時間の公演が終わって、娘はもちろん、小劇場はひさしぶりのわたしも、まるで自分たちも体を動かしていたかのように、はああっと息をついた。

 

わたしが演劇をよく観ていたのは、20代のころだ。

夢の遊眠社が盛んに活動していた。

野田くん、と当時は勝手に呼んでいたが、野田秀樹さんを初めて見たのは紀伊国屋ホールだった。

この人はなんなんだろう、と呆気に取られた。

見た目にはほとんど壁のように切り立った装置を駆けのぼり、そのまま駆け下りてくる。

人間、ではないのではないか、と真剣に疑った。

 

その後の公演はパルコ劇場になり、本多劇場になり、代々木の体育館にもなっていった。

わたしが知ったときには、夢の遊眠社はもう小劇場から出てきていたのだけれど、匂いは失っていなかった。

そんな野田くんや、上杉(祥三)くんや段田(安則)くんが好きだった。

本多劇場での年越しカウントダウンにもいったっけ。

 

母まで野田くんの熱烈なファンになり、あの子は自分が生んだような気がする、とさえいっていた。

年上ファン最強の言葉だ。

自分が生んだような気がする。

 

わたしの青春の、夢の遊眠社

娘もこれからそんな同時代のアイドル(メディアを介さないアイドル)を見つけるのだろうか。

追っかけも、母としては勧めたい。

素敵なものがきっと心に残るから。