羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

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ぬいぐるみが好きだ。

歩けるようになったころに、最初に買ってもらったハンドバッグが犬のぬいぐるみになっていて、それがとても気に入っていたそうだ。

そのとき以来だから、つまり、ぬいぐるみとともに生きる一生なのだ。

 

いままでに持っていたいちばん大きなぬいぐるみはコリーだった。

伏せしている形で、顔の大きさがわたしと同じくらいあった。

おもちゃ売り場でずっと鼻を撫でつづけることによって獲得したらしい。

 

大きくてものがよく、当然高いので、父が他のものをいろいろ持ってきて気をそらそうとした。

わたしは、ちらっとそっちを見て、かわいいわねえといってまたコリーの鼻を撫でていた。

父は根負けしたそうだ。

父が持ってきたぬいぐるみにも「かわいいわねえ」というところがうまい。

天性のものを感じる。

 

大人になってからはシュタイフ社のものに惹かれるようになった。

純毛のモヘアで手触りがいいこと、造形がリアルであること、作りがしっかりしていること。

さすがのドイツ製。

テディベアを二つ買った。

 

娘が生まれて、さあぬいぐるみだと意気込んだところ、彼女はリアルなものしか欲しがらなかった。

シュタイフだと、ポニーやオオカミ。

堅くて小さくて、だっこして遊ぶようなものではないのだが、それがいいらしかった。

 

わたしのほうが、ふわふわしたくまが欲しくなり、プリンセスモーリーという、小さい子向けのテディベアを購入。

淡いベージュで身長25センチくらい。

この子がいちばんの相棒となった。

一人で映画を観るときや、旅行するときに連れていくこともある。

最近では母の手術を待つときに病院に連れていった。

 

さらっと書いているけど、これが他人ならとんでもないと呆れるだろう。

一つ、いいわけがある。

あの、ジェーン・バーキンも、テディベアを大事にしているのだ。

くたくたというより、ぼろっとしているくらいの子を。

年上の彼女も持ってるテディベア。

バッグの「バーキン」に入れて連れて歩いたりしているのだろうか。