羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

天地創造

中学からみんなで観にいった映画が何本かある。

わたしたちが入学してからは聖書にまつわる映画だった。

ベン・ハー」「十戒」「天地創造」「ジーザスクライスト・スーパースター」。

 

「ジーザスクライスト・スーパースター」には感動して、もう一度観にいった。

生まれて初めて映画館で二回観た映画だ。

 

それは真面目な感動のほう。

笑ったことで覚えているのは「天地創造」だ。

アダムが塵から生まれてくるところ。

 

塵が小高く山型になっているところがあるなと思って見ていたら、それが寝た状態で立てているアダムの膝だった。

アダムはだんだんに全容を現してきて、上体を起こしながらこちらに向かって手を伸ばしてくる。

立てた膝のおかげで見えてはいけないところは見えないようになっているのだった。

乙女らは爆笑。

最初から小高くなっていたのがおかしいという笑いだ。

 

映画館には他のお客さんもいたはず。

そんなところで爆笑する女子中学生にとまどっていたことだろう。

 

わたしたちには、笑ってはいけないところというのはなかった。

入学式の最中にも笑う先輩たちに驚き、でもそれは入学式だけだった。

礼拝でも先生方が話しているときにも、なにかあれば笑ったり「えええーーーっ」と声を揃えて不満や抵抗を表したりしたものだ。

 

とにかく、アダムの膝は、わたしたちには格好のネタだった。

映画が終わってからも起き上がってくるアダムの動きを真似して笑った。

 

女子校にいると、女の子というより、性の区別のない生き物になる気がする。

ボーイッシュであり、ガーリッシュであり、中性的でもある。

男の子の目を意識しないでアダムの膝を笑えたのは、爽快なことだったが、卒業後の人生のためには、どうだったかなあ...