羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

柳眉または蛾眉

メイクアップのなかでいちばん難しいのは眉を描くこと。

わたしはそう思う。

 

ファンデーションを塗って、チークをつけて、口紅を引く。

次に眉を描くのがわたしの手順だ。

淡くグレイがかったブラウンのペンシルはだいぶちびているのだけれど、色とパウダーっぽい風合いが気に入っている。

 

それで眉に陰をつけるように軽く描いていく。

太さは眉頭の幅のままでストレートに描く。

とはいいながら、全体的に優しいカーブにする。

なおかつ眉尻に向かってだんだん濃くなるように描く。

横から見たときにも過不足ない長さにする。

 

書いてみると、こんなにたくさんのことをいっぺんにしているのだ。

もとの眉から外れないで、ソフトな印象に変えたい。

眉でメイク全体の調和を計りたい。

そんなことも考えている。

 

ぜんぶまとめて「優しい気持ちで描く」というのが正解かも知れない。

相手は自分の顔だから、いいたいことは山ほどある。

それでも、優しい気持ちになって、優しい眉の優しい顔を、会う人たちに見てもらおうね、となだめながら描く。

 

うまく描けたときには、なんとなく余裕を持って外に出かけられる気がする。

口紅やリップグロスの艶も、マットな眉が引き立てるのだ。

ちびたペンシルにはもう少し現役でいてもらうつもり。

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