演芸鑑賞遺伝子
母、わたし、娘の三代の血統については少し前に書いた通り。
母、わたし、息子の血統もある。
それは演芸鑑賞のセンスだ。
昨夜息子と二人で漫才のテレビ番組を見た。
あるコンビについて息子が「品が悪くないね」といった。
ああ、それ!とわたしは指を立てた。
「品がいい」よりいい感じのする「品の悪くなさ」がそのコンビにはあった。
「品がいい」は「品がない」に転ぶ危険性があるが「品が悪くない」はコシが強い。
そのコンビの将来性には期待できるとわたしも思う。
親ばかだけれど、そのへんで「品が悪くない」という言葉が出てくるのは、やはり、祖母の代から演芸をよく見てきたからではないだろうか。
息子は小学校6年生のときに、古今亭志ん朝さんのあるビデオを見て「わっかいなー」といったことがある。
たしかにその志ん朝さんは若かったのだけれど、そういってる息子よ、あなた自身の年齢設定はいくつなの、と聞いてみたかった。
母の演芸鑑賞センスは、玄人はだしだった。
深夜番組のお笑いを一人でよく見ていて、あの子は面白いね、というと、すぐに売れてきた。
息子がインターネットでの評判を聞いてから見るようになった番組も、すでに毎週見ているのだ。
鼻が利く、というのだろうか、あとから、誰々が売れてきたのは、あの番組のあの芸からだという話が出ると、母は必ず、リアルタイムでチェック済み。
いちばん新しいものに反応するアンテナを持っていた。
母と息子の間をつないだわたし自身は、長い年月あまりにも演芸鑑賞に打ち込みすぎて、いまは変な駄洒落にたまらなく受けてしまう。
ビートたけしさんのくだらない扮装のコントもなにより好きだ。
復活して欲しいお笑い番組は、迷わず「お笑いウルトラクイズ」。
母の先物買いと息子の知的鑑賞眼にはさまれて、ばかばかしさを愛する演芸ネイティヴ。
もしも将来四代目が生まれたら、その子とはすごく話が合うのかも知れない。