羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

朝顔

こどもたちがそれぞれに小学校1年生だった年の一学期の終わり。

学校から朝顔の鉢を持って帰ってこなければならなかった。

こども一人ではとうてい運べない。

わたしが自転車に乗って小学校まで往復できるようになったのは、娘が2年生の秋からだから、朝顔のときにはまだ徒歩しか手段がなかった。

 

小学校は遠い。

家は1丁目で小学校は4丁目。
なにも持たずに歩いても15分かかる。

往路は15分だが、帰りは25分はかかったと思う。

重いのもさることながら、持ちにくいことも相当だった。

 

きのう、自転車の後ろに朝顔の鉢をのせて、横断歩道で信号を待っているおかあさんを見かけた。

やはり、疲れた様子だった。

大変ですね、と声をかけたい気持ちになった。

 

ことしは、娘の朝顔以来の鉢をベランダに置いている。

今月の始めに、地元の朝顔市で買ったものだ。

白、濃い紫、ピンク、渋い赤紫が、毎日ランダムに咲く。

夜寝る前に蕾を確かめ、朝目が覚めたらいちばんに窓を開けてベランダの様子を見る。

白とピンクはとくに大輪で、咲くあいだに花弁が裂けてしまうことがあるのが残念だ。

 

一夏をこの鉢と過ごす。

種をつけさせるのは9月に入ってからでいいらしい。