羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

体力測定

一度体感してみたいと思うのは、他人の体力である。

わたしは、自分ではさんざん、体力がない、体力がない、といいいふらしているけれど、実際のところはどの程度のなさなのか。

もしかしたら、ぜんぜん普通、といわれそうな、人並みのものを持っているのかも知れないし、これはもう無理、早く家に帰って寝てなさい、といわれるほどの脆弱さなのかも知れない。

だから、わたしから見て、体力あるなあ、と思う人に一日なって、その活動状況を体感してみたいのだ。

 

そうしたら、いつものわたしは怠け心だけだ、とわかるかも知れないし、やっぱりへなへなでよかったんだ、天と地だもの、と納得できるかも知れない。

 

えええー、こんなに疲れないんだ、こんなに力が出るんだ、こんなに平気なんだ、と感じるのは楽しいと思う。

えええー、これでがんばってるんだ、人の体力には大差ないんだ、やる気のあるなしだけなんだ、と思い知るのはつらいと思う。

 

買い物したり、御飯を作ったり、こどもたちの相手をしたり、洗濯物を干したり、掃除をしたり。

どれも簡単に、なのだけれど、合間合間にぐったりしてしまう。

買い物の後は、いわゆる「よろけ」でコーヒーショップに入らないと帰る元気が出ない。

 

一日外で仕事をしてくる人たちに申し訳が立たないなあと思いながら、晩御飯の後にベッドに横になる。

家事と仕事を両立させている人も、当然のことながらたくさんいるのだもの。

 

体力ないわりに外出しすぎというご意見も、もう書いているそばから聞こえてくる。

それもそうなのね。

わたしが出かけるのは、やらなければならないことをやろうとするとすぐに疲れるという現実からの逃避なのだと思う。

じつは、夜になって、きょうはあんなに大きな街まで出かけてきたのだ、と思い返すと気が遠くなりそうなのだ。

 

ためいき。

この秋は、小さな世界を生きてみよう。

狭い世界ではなくて「リトルトーキョー」の「リトル」な世界を。