悲しいとき。 うれしくて笑顔だけでは間に合わないとき。 両手の薬指が、遠い湖から涙を呼んでくる。 周りの樹々を映す、碧い湖。 わたしの涙はぜんぶそこにある。 吸いあげて腕のなかへ。 腕は震える。 まず腕が泣いて、肩が泣く。 そこから瞳に流れこんで…
外堀通りの舗道を、小学生だった娘といっしょに、新橋のほうから数寄屋橋に向かって歩いていたときのこと。 前髪のあたりに「しゅっ」という気配を感じて、わたしは反射的に腰を引いた。 その刹那、半歩先に木片が落ちてきた。 板チョコを横に二枚並べたくら…
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