羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

職人さんはゆっくり歩く 2 大工さんのまなざし

「息子のまなざし」というフランス・スイス映画の主人公は大工さんで、目で見ただけでそこの長さをぴったり計るという技能を持っている。 目分量というのは調味料の場合だと「適当」のいいかえだったりするが、こんな大工さんなら目分量がジャストなのだから…

職人さんはゆっくり歩く 1

お昼前後に街に出ていると、職人さんが二三人連れ立って、お昼御飯を食べにいくかお店から出てきたかしたところに遭遇する。 「ワークマン」スタイルの彼らは、のんびりした表情で、きまってゆっくり、ゆったりと歩いている。 その様子を見ると、わたしはわ…

日本のどこかに

シルバーウィークは明日まで。 老人保健施設で暮らしている母の状態は落ち着いているので、泊まりがけでどこかへいっても構わないのだが、なんとなく、自宅を離れられずにいる。 鎖国女といわれながらも、パスポートは一昨年取得済みだから、海外だっていけ…

Daisy

毎日着けている指輪がある。 デイジーを象った銀製で花芯はゴールド、茎を指に巻きつけたようになっている。 花がかわいらしかったのもさることながら、茎が自然に波うっているところが気に入った。 デイジーは花占いの花。 愛してる、愛してない、愛してる.…

小ゑんちゃん

昨夜思いがけず、昭和56年の立川談志師匠のラジオ放送の音源を聴いた。 素顔の師匠によく会っていた頃の声だったから、聴くなり涙がぶわっと出た。 高座は芸の域だが、ラジオはプライベートの会話と変わらない。 いつも心のなかでイメージしている師匠の声と…

座高問題 part 2

今週の初め、映画を観にいったときのことだ。 プレミアム会員というのをもう何年も続けている立川の映画館。 インターネットで予約した座席についたら、前のおにいさんの座高が高く、かつ毛量が多く、スクリーンの中央下方にスタンダードプードルの頭部のよ…

前世

夢夢した乙女話と思って読んで欲しいのだけど。 前世なんてものを考えていたことがある。 修道士や修道院になぜだかとても惹かれていたからだ。 最初は、息子がおなかにいたとき。 カトリック系の病院の産科に検診に通っていた。 すでに秋も深かったと思う。…

ゼリーのつくりかた

抽象的なことをよく考えている。 言葉を遣う上で、もっとも面白いのが、抽象的なことをどこまで伝えられるかというチャレンジだ。 自分のなかで、その抽象的なことが、確かに形になっていることが大前提だ。 たとえていうと、ゼリーを作っているときのような…

日比谷三昧

この一月で、日比谷に6回通った。 まずは娘と東京宝塚劇場へ。 その二日後、日比谷シャンテにあるドレス店に娘の成人式のドレスをわたし一人で買いにいく(娘本人は観劇した日に試着済み)。 12日後、友人とシャンテ近くの喫茶店で会う。 その週末、思いがけ…

コワモテ

「こわもて」を漢字で書くと「強面」だとわたしが知ったのはもうだいぶ大人になってからだった。 それまでは「怖くてモテる」の略だと思っていたのだ、うっすらと。 うっすらと、というのは、そんな意味の言葉だろうという見当で深く考えなかったということ…

デュオニソスに愛されて

体力不足を嘆いてからしばらく休んで恐縮。 強制終了の夜あり、添削指導の夜あり、ミュージカル観劇の夜あり。 ミュージカルはブローウェイの「ピピン」。 招待券を思いがけずいただいて娘と観にいったのだった。 その6日前には宝塚の公演も、いけなくなった…

体力測定

一度体感してみたいと思うのは、他人の体力である。 わたしは、自分ではさんざん、体力がない、体力がない、といいいふらしているけれど、実際のところはどの程度のなさなのか。 もしかしたら、ぜんぜん普通、といわれそうな、人並みのものを持っているのか…