羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

knitting fantasy

編み物の醍醐味は、自分の手元で次元が変わることにある。

 

毛糸は一次元

正しくは、毛糸も立体だし、この世界にあるものだから三次元なのだけれど、ここは比喩として一次元

 

それを自分の手で針に掛けて、からめたり引き抜いたりする作業を繰り返すことで、二次元の編み地になる。

 

マフラーやストールならば二次元でできあがりだけれど、帽子だったら最初から輪にして編んだり、円から半球に仕上げていったりするので、編むほどに三次元のものが現れてくる。

また、ベストやセーターならば、別々に編んだ二次元の身頃や袖を、互いにはぐことで三次元になっていく。

 

あ、まちがえたー、とほどけば、どこからでも、またもとの一次元の毛糸だ。

あーあ、とため息をつきながら、ほどいた毛糸を三次元の毛糸玉に巻いたりもする。

 

編むには時間がかかるから、編み地には時間も編み込まれているといってよく、そうなるとできあがったものは四次元作品か。

時をかける編み物。

 

じっさい、去年編んだ帽子を今年出してまたかぶるときなどには、編んだときの時間がふんわり戻ってくるような気がする。

 

つまり、編み物って、かなりSFなのだ。

そんなところも好きなゆえん。