羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

春の空

陽春。

日差しは春のように明るい。

きょうの空は青くて雲が白くて、しゃれたこども部屋の壁紙のようだった。

 

高いところに小さく、飛行機の白いおなかが見えた。

シラスくらいの大きさだ。

雲の端から入っていく。

わたしは待った。

 

ゆっくり五つ数えたら、出てきた。

青いところをしばらく飛んで、また雲に入った。

今度は六つで出てきた。

 

いってらっしゃい。

いつかわたしも乗せてね。

 

見送って歩きはじめたとき、ごおおお、という音が聞こえた。

シラスの飛行機が、返事をしてくれたように思った。