羽生千夜一夜 

羽生さくる 連続ブログエッセイ

plane bird

娘の名前の文字を考えてくれた友人は、言葉のセンスに優れていて、人を評するときにもいちいち面白かった。

わたしのことは「マニアに受ける地味な野鳥」だと。

 

知っている人は知っている。

わたしの目鼻立ちが地味なこと。

そして、変わった人に気に入られたことは幾度か、ある。

 

記憶に新しいところでは、スッポン料理店の主人70代。

仕事の続きの食事会で隣に座ったら、いきなり、僕の手にはかれこれ50年スッポンのコラーゲンが浸みてるからすべすべなんだよ、とおっしゃる。

差し出された手のひらはほんとうにつるつるのピカピカ。

思わず指先を置いてみたら、もう片方の手が瞬時に出てきてがっちりホールドされた。

それでしばらく話していたから、わたしの手にもコラーゲンが浸みたかも。

 

ある日、WOWOWでたまたま『ビッグ・ボーイズ』という、アメリカのバードウォッチャーたちのコンクールを題材にしたコメディを見た。

主人公の一人ジャック・ブラックが、父親に自分の撮った野鳥の写真を見せるシーン。

 

「僕がいちばん好きなのはこれなんだ」

「なんだずいぶん地味な鳥だな」

「地味なところがいいんだよ」

 

きたーっ、と思った。

英語では「plane one」と聞きとれた。

ジャック・ブラックは、こいつはこの小さい体で信じられないほど遠くまで旅をする、と続けた。

地味だけど飛ぶ。

地味さは潜在能力によってプラスに転ぶわけだ。

 

わたしも地味な外見を大切に、文章力を磨こう。

それしかないもの。